「母親修行」

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疲労と思いやり

ある日の夕方、帰宅後やけに疲れてしまいベッドに横たわって動けずにいると、娘が「今日は私がご飯を作ってあげるね」と言ってきた。
「さすがは女の子、思いやりのあるしっかりしたお姉さんに成長したなぁ…」と感動しつつ、素直にお願いした。

揚げ餃子

取り敢えず簡単にできるものということで、冷蔵庫にあった餃子を軽く揚げてくれることになった。
何やら香ばしい匂いに体を起こし、キッチンへ行ってみると娘は「ちょっとだけ焦がしちゃった!エヘヘ★」と、可愛らしく言いながらテーブルの上にお皿を置いた。
失敗のごまかし方もお姉さん並みとは、娘もなかなかの成長ぶりだ。

衝撃と葛藤

皿の上には娘が揚げて盛り付けた餃子が並んでいた。
「んんー、焦げている。見事なまでに焦げている。これはきっと体に良くない。だがしかし、娘の厚意を無駄にしては母親失格ではなかろうか。でも・・・うーん。」と心の中で葛藤を繰り広げた末、私はとりあえず笑顔を作り他に何品か簡単に用意して夕食の席に着いた。

娘のお勧め

ママ、私が焼いた餃子を食べてみて!」目を輝かせながら勧める娘の期待に応えようと、あまり焦げていない餃子を選んで食べてみた。
「うん、美味しいよ!有難う。」と言うと、「こっちのは?食べられないかなぁ・・・」と今度は焦げ焦げの餃子を見つめて悲しげに言うので、「やはりここは、せっかく私の為に作ってくれたのだから食べるべきか、でも焦げたものを食べて癌になるは困るから食べずに捨てるべきか、うーむ。」と頭の中で同じ問いかけを何度もグルグルと巡らせ、一度は挑戦してみることに決めた。

優しい母の心

「うん、ママがそれ頂くよ。せっかく作ってくれたんだもんね。」と感謝を込めた笑顔で言うと娘はとても嬉しそうに笑った。
その笑顔を眺めながら「私も母親として随分と成長したもんだなぁ。娘の為にこんなに優しくなれるなんて、なんだか自分で感動してしまう。」感慨深く思った。
そして思い切って黒い餃子を口に入れた。

残念な現実

「苦っ!何これ、苦っ!無理!これは食べてはいけないヤツだわ。貴方も絶対に食べちゃダメよ、病気になったら困るから!」

 「優しい母親」2分で終了。 
私が優しく寛大な母親になれる日はまだまだ遠く、「母親修行」の日々は続く。