門外不出の『柿サラダ』

f:id:n-a-creation:20161108193911j:plain母と祖母  以前紹介した大正生まれの100歳の祖母は母方の祖母、つまり私の母の母親で、この二人はずっと一緒に暮らしているだけあってとても仲が良く、味の好みや生活習慣もよく似ている。

おやつ  母は仕事人間でいつも会社で働いていたので、食事の支度や買い物などは全て祖母がしていた。
祖母が買ってくるおやつはいつもシブく、私は小さい頃からお饅頭、かりんとう、煎餅などを与えられ、ポテトチップス、チョコレート、ポッキーなどがおやつで食べられるなんてことは夢のまた夢だった。

お弁当  朝は母が食事の支度をしてお弁当を作るのだが、「見た目より質」派なので、幼稚園の頃から私のお弁当は内容は豪華だが茶色のみで可愛らしさのかけらもない、まるで職人の親方のお弁当のようだった。

マヨネーズ  母が小さかった頃はマヨネーズがまだ普及しておらず、母と祖母にとってマヨネーズは珍しい特別な調味料だった。
「これさえあれば何でも洒落た一品に早変わり!」と、イチゴやメロンにまでマヨネーズをかけて食卓に並べるので困った。

価値観  私にとってはイチゴやメロンは素敵なデザートなのだが、昔から自分たちの趣味の畑でとれるイチゴやメロンを飽きるくらい食べてきた母と祖母には、マヨネーズの方が価値があるもののようだった。

必殺技  秋になると庭の柿の木に実がたくさん実り、干し柿にしたり完熟してから食べたりしても食べきれないほどだった。
そこで母と祖母は二人で相談し、平たい種無しの柿の皮を剥いて十字に4等分した上に、クルリと一周マヨネーズをかけるだけの必殺料理「柿サラダ」を考案したのだ。
おかずとして「柿サラダ」を食べた後にはデザートの柿
が待っている、嫌になるくらい柿三昧の日々だった。

お食事会  母と祖母は自分たちが考案した「柿サラダ」がとても気に入っていたので、私の友人が遊びに来たときもお客さんを招いたお食事会のときも、「柿サラダ」はいつも振舞われた。
その斬新
な一皿困惑しながらも失礼のないように完食していたが、私は「美味しい」という反応をしている人を一度も見たことがない。

門外不出  実際に我が家で「柿サラダ」を食べた人々も、私が実家を離れてから「柿サラダ」の話をした相手も、誰もそれを作りたそうな反応はせず、よって私の実家で食べられている母と祖母の味「柿サラダ」は未だに門外不出であり、今後も門外にて作られ広められることはないだろう。

最強コンビ  今年も庭に柿が実る季節になり、じきに実家では「柿サラダ」が食べられるのだろう。
母と祖母によって今度はどんな新しい必殺料理が考案されるのか楽しみだ。