魅力的なイベント
エコビレッジから2016年12月17日(土)のチーズ作りのイベントのお知らせを頂いたのだが、残念ながらもう既に決まっている予定があり参加は諦めていた。
だがその日はワインの試飲会もあり、ワインを醸造したワイナリーのオーナーと地域の有名酒店の名物オーナーの話が聞ける貴重な機会なので、夜だけでも参加してはと声を掛けて頂き、やはりチーズとワインの魅力的なイベントを諦めきれず参加を決めた。
ハードな計画
当日はもともとの予定を早めに切り上げてエコビレッジに向かい、午後3時半ぐらいには到着してチーズ作りに途中参加し、夜はワインの試飲会、次の日はもともと入っていた予定に間に合うように午前8時過ぎにはエコビレッジを出なくてはならないという、バタバタで短い滞在を覚悟の上で計画を強行し参加した。
冬の盲点と優しい海
冬に遠出をすることはあまりなかった為、季節的な交通機関の状況が把握できず、渋滞に巻き込まれて到着が1時間ほど遅れてしまった。
日頃バスを利用する機会がないのですっかり忘れていたが、冬は特にバスより電車の方が確実だったと思い出し、少し悔しい気持ちで車窓から景色を眺めていると海が見えてきた。
冬の日本海は灰色で寒々しくもあったがそれでも大きくて優しく、故郷の海に似たその風景を見て懐かしくなり、徐々に穏やかな気持ちに戻ることができた。
チーズ作り
エコビレッジに着き、急いでチーズ作りをしている場所に行くと、午前中から作業をしていたメンバーたちが温かく迎え入れてくれた。
初めて会う人ばかりだったが、チーズを伸ばす作業が始まっていて、もうチーズが残り少なくなっていた為、挨拶もそこそこにすぐに渡された手袋を着けて慌ただしく作業に参加した。
出来立てのモツァレラチーズ
寸胴鍋の中にぬるま湯とモツァレラチーズの塊が入っていた。
お湯を足してもっと柔らかい状態にした後で、手でチーズを手のひらに握れるぐらいの大きさにちぎって、餅のようにこねたり伸ばしたりして好きな形に整えてから水の中に入れる作業をした。
ちょっとちぎって出来立てのモツァレラチーズを味見してみると、独特の歯ごたえで濃厚な味がした。
効率の良さとチームワーク
ビニールの袋にチーズとホエー(乳清)を詰めて密封し、手作りモツァレラチーズが完成した。
昔ながらの形のミルク缶に牧場長が持ってきてくれた搾りたての生乳を使って、1日がかりで丁寧な手作業で作り上げた最高のチーズだ。
レトロなミルク缶や餅みたいにどこまでも伸びる弾力の強いチーズの様子を写真に撮りたかったのだが、何せ作業に追われていたので気が付くと片付けも終わっていて、カメラを取り出す暇が全くなかった。
チームワーク良く、きちんと分担されて進んだ効率的な流れ作業だったということだろう。
ホエーとは
ホエーとは牛乳からチーズを作る際に固形物と分離されてできる液体で、栄養価が高く、生クリームの代替として料理に用いるとカロリーを大幅に抑えることができるらしい。
ブランドとして有名なホエー豚は、このホエーという液体を与えられて育っているので、低カロリーで高蛋白質という良品質になるのだそうだ。
自然の恵みと人間の知恵の賜物である。
チーズ作りや牧場に興味がある方には、こちらの情報を。
試飲会
チーズ作りが終了し、今度はワインの試飲会に入った。
ワインの醸造を手掛けたワイナリーのオーナーの話を聞き、まずはフルートグラスに注がれた美しいロゼカラーのスパークリングワインを皆で眺めて色と香りを確認した。
グラスを持っただけで香りが取れるくらい強く果実味を感じさせる、とても魅力的なスパークリングワインだった。
テーブルの上に作りたてのモツァレラチーズと、チーズ作りの講師の方が持ってきてくれたカチョカバロチーズ、そしてスパークリングワインが揃い、待ちに待っていた試飲が始まった。
贅沢なマリアージュ
私は今年、ワイン葡萄の剪定作業のみの参加だったが、ワイン葡萄の栽培にそれぞれのペースで関わった人たちが集まり味わう「自分たちのワイン」の味は、その場の誰にとっても特別なものだったに違いない。
そして、さっき自分たちで作ったばかりのチーズを一緒に頂くという贅沢なマリアージュ。
笑顔が溢れる、とても和やかなひとときだった。
それぞれの想い
そこへ地元の有名酒店の名物オーナーが登場し、オリジナルのスパークリングワインに対する講評を頂いた。
ワイナリーのオーナーと酒店のオーナーの熱い意見が一通り交わされ、両者の意見に深く頷きながら様々な視点と考え方を勉強させてもらった。
そして、皆それぞれの想いでワイン葡萄への関わりを振り返ったり、来年に向けての意欲や課題を胸にした。
美味しい料理
それから間もなくして、夕食の料理が運ばれてきた。
自分たちで作ったモツァレラチーズとエコビレッジで栽培されたジャガイモを使ったおススメの料理で、ほんのりきいたガーリックがワインを進ませる一皿だ。
他にもパスタや鰊を使った郷土料理、ホエーを使用して焼いたパンなどが並び、試飲会から宴会へと突入した。
料理を作ってくれるのは飲食店をしていた経験があるエコビレッジのスタッフで、ここではプロの本格的な料理を堪能させてもらえる。
熱いマリアージュ
ワイナリーのオーナーが「これからはワインとチーズとパンなんだよ!これが揃わないと駄目なんだよ!」と熱弁していたところに、ちょうどエコビレッジで作られたワインとチーズとパンが並ぶこととなり、場の雰囲気はますます活気づいた。
地域をあげてワイン葡萄の生産が盛んなので地元のワインが作れる、広大な自然で酪農が営まれているので新鮮なチーズが作れる、小麦の生産が盛んで地域ブランドの品種もあるので特別なパンも作れる。
確かに「ワインとチーズとパン」でその土地全体のマリアージュを楽しめるというコンセプトが、これからこの地域をますます盛り上げていくのかもしれない。
さすがは地域を愛するワイナリーのオーナー、素晴らしいセンスと着眼点である。
幸せなひととき
スパークリングワインも私が予想していた以上に振舞われウットリするぐらい頂いた。
酒店のオーナーの差し入れのワインも、オーナーが長年愛用しているソムリエナイフで華麗に抜栓され、そちらも飲ませて頂いた。
透き通る綺麗な濃い赤色で、スッと飲めてしまうクセの無さと舌の上で広がる果実味が印象に残るワインだった。
様々な面々
エコビレッジの取材に来ていた編集者、エコビレッジの会員、チーズ作り講師をしてくれた牧場長、農場を営んでいる団体代表、農業を営んでいる知識豊富なご近所さん、そしてワイナリーのオーナーと有名酒店の名物オーナーなどなど、普段の生活ではなかなか接点を持つことが難しい人たちとお酒や食事を楽しみながら交流ができるということは、とても嬉しいことだ。
新しい御縁と楽しみが広がり、大変な日程ではあったが参加させて頂けたことにとても感謝している。
忘れられていそうな願い
夜の10時半ぐらいまで宴会は続き、皆とても機嫌よく盛り上がった。
ワイナリーのオーナーと酒店のオーナーが、今度計画しているワインの試飲会の手伝いをさせてくれるという話になり、私は真剣にそのつもりでいるのだが、果たしてオーナーたちは覚えているのだろうか・・・
グラス洗いだろうと雑用だろうと、私はとにかくいろんな経験がしたいので、ボランティアとしてイベントの運営側にまぜて頂くことを本気で願っている。
娘とエコビレッジ
一方、同行した娘は広い場所とたくさんの雪に大興奮で、雪のベッドや滑り台などを作って外遊びを満喫した後、スタッフの方々に料理を教わったり手伝いをさせてもらいながら過ごしていた。
エコビレッジでは私と娘はなぜか自然と別行動になる。
家族以外の大人と行動することで、ちょっとした自立心を楽しんでいるようにも見える。
そういった意味でも、エコビレッジへの訪問は私たち親子にとって、とても大きな助けとなっている。
エコビレッジに外国からの滞在者が来たら言葉の環境も変わるので、語学の面でも娘がどんな刺激を受けるのか注目だ。
大自然の風景
宴会後は、それぞれの宿泊部屋へ戻り就寝した。
ハードな一日だったことと、アルコールが入っていたことで、あっという間に心地よい眠りに落ちた。
次の朝6時半ぐらいに起きるとまだ外は薄暗く、月が綺麗に輝いていた。
窓から見える雪原の風景は幻想的で、自分が本当にそこにいるのが何だか信じられない気持ちだった。
慌ただしい朝
朝食はオリジナルのジャムやチェリー漬けなどでボリュームのあるフワフワのパンケーキを頂いた。
牧場長が持ってきてくれた飲むヨーグルトも絶品で美味しかった。
その日もエコビレッジではイベントがあったのだが、私たちは帰らなくてはならず、バスに遅れないよう少し早めにエコビレッジを後にした。
急いでいたのでうっかりお土産に用意してもらったモツァレラチーズとボトル詰めのホエーを忘れてきてしまったが、私はもう十分に美味しく頂いたので、そのチーズなどのセットはまた違う訪問者への幸せのお裾分けということでちょうど良かったのかもと思った。
幸せな巡り合わせ
帰りはまた車窓から大好きな海の風景を眺め、すがすがしい朝を楽しんだ。
バスに揺られながら、とても興味深く濃い時間と新たな御縁を振り返り、温かい気持ちで到着まで浅い眠りについた。
今回もとても有意義で、心が元気になれる素敵な体験ができた。
この一連の人や環境との不思議な巡りあわせにとても幸せを感じている。