ジャカランダの風景
私が人生初の海外滞在に選んだ国はオーストラリアでした。
せっかく行くなら『多くの人が訪れている人気の国だから』という他人発信の決め方ではなく、自分が『コレだ!』と思う理由で決めたいと考えた結果、動物好きの私にはその国独特の特別な動物たちがいるオーストラリアが理想的ではないかと思いました。
秋に日本を旅立ったのですが南半球のオーストラリアは季節が真逆なのでぽかぽかの春でした。
最初に訪れた都市のブリスベンは、春の気候が日本とそんなに変わらない過ごしやすい都市でした。
『青の桜』ともいわれている『ジャカランダ』という花が、春の街の景色を紫色に彩っていたのがとても美しく印象的でした。
カンガルーとの出逢い
オーストラリアで最初に触れあえた動物はカンガルーでした。
動物好きな私の為にホストファミリーがウェルカムイベントとして連れて行ってくれた、大きな公園の一角にカンガルーがたくさんおり、そのエリア内ではカンガルーに触れたりエサをあげたりできるようになっていました。
日本では動物園でもカンガルーが見られるかどうかという感じなので、カンガルーと柵越しではない状態で同じ場所に一緒にいられるだけでも凄いことなのに、撫でたり自分の手から直接エサをあげたりできるなんて、衝撃的でとても嬉しい展開でした。
エサは小さいカップに入ったものを購入するシステムで、私はやる気満々で2カップ買いました。
カンガルー観察
広いエリアのあちらこちらにカンガルーが点在していたので、とりあえず一番近くにいるカンガルーの所へ行ってみました。
人慣れしているカンガルーたちは、ゴロンと寝そべったまま撫でられたりエサを食べたり、記念撮影で何人もの人に囲まれたりしていました。
「Hello!How are you?」とテンションマックスの高い声で話しかけると、寝そべっていたカンガルーが起き上がってくれました。
目の前にいる大きめのカンガルーにエサをあげながら観察していると、脚や尻尾のサイズに比べて手が物凄く小さいことに気付き、なんか可愛いなぁと思いました。
背中を撫でてみると、日光浴で温まった柔らかな毛並みの感触が気持ち良く、思ったよりゴワゴワしていないんだなぁと驚きました。
嬉しい『カンガルーまみれ』
相変わらずのテンションでカンガルーに話しかけていると、少し離れた所からもカンガルーたちが、私のことを珍しそうに集まってきてくれました。
本当は自慢のジャンプで早く移動することもできるのですが、そこのカンガルーたちは人間がたくさんいる状況に慣れていて気遣ってくれているようで、のそりのそりと来てくれました。
カンガルーといえばお腹のポケットから赤ちゃんカンガルーが顔を出しているイメージでしたが、私がそこで見た赤ちゃんカンガルーたちは皆お母さんのポケットにアタマから入って脚だけがはみ出した状態でした。
やっぱり赤ちゃんは大勢の人が苦手なのかもなぁと思いながら、カンガルーまみれになって記念写真を撮りました。
コアラとの出逢い
次に私が触れ合った動物はコアラです。
ブリスベンの有名な観光スポットを周りながらアニマルパークにも行けるバスのデイツアーに参加しました。
オーストラリアは州によって法律が違い、また、動物がいる施設ごとにも方針が違うので、直接コアラを抱っこをして写真を撮っても良かったり、直接ではなくコアラが掴まっているクッションのようなものを持っての撮影ならOKだったり、コアラを保護するために抱っこは禁止で、飼育員さんが抱っこをした状態のコアラと一緒に写真を撮るならOKだったりと、いろんなパターンがあったように思います。
私がそのツアーで訪れたところではコアラの直接抱っこがOKで、たくさんの人が並んで順番待ちをしていました。
ドキドキの順番待ち
初めて間近で見るコアラに大興奮で、抱っこの順番を待っている間じゅうずっとコアラの様子を観察していました。
コアラたちはエサのユーカリの成分によって常に酔っぱらった状態で、1日のうち22時間は眠っているので、活発に動いている姿はそうそう見られない動物なのですが、それでも背中を丸めて木に引っ付いて眠っている姿にすっかり癒されました。
写真撮影で抱っこされている起きている状態のコアラは、小柄でとても可愛らしく、自分の順番が近づくにつれドキドキが増していました。
私の前の人がコアラを抱っこして写真を撮り終わった後、飼育員さんに「ちょっと待っててね」と言われたので、少しの間また眠っているコアラ軍団を眺めて待っていました。
おっさんコアラ登場
「お待たせー!」と言われて『やったぁ!いよいよ私の番だ!!』とキラキラしながら振り返ると、そこには体の大きなコアラがダルそうに飼育員さんに寄りかかり、重そうに抱っこをされていました。
『あれっ?さっきの可愛いコアラちゃんは?えっ?まさか私の順番で交代しちゃうカンジ?!しかも、さっきの子と全然違うんだけど・・・どう見てもおっさんにしか見えないんだけど・・・』と戸惑いの表情で凍りついている私を見て飼育員さんは「大丈夫だよ、緊張しないで!全然怖くないよ!リラックス!」と声を掛けてくれました。
他の順番待ちの人たちも、「大丈夫さ、君ならできるよ!」「きっといい記念写真が撮れるよ!」と温かく後押ししてくれました。
おっさんコアラと私
そんな中、私は『違うんだよー!緊張じゃなくて、あまりのギャップにショックを受けているんだよー!みんな、さっきまでとの変わりように気付いていないの?!』と心の中で叫びながら、飼育員さんに渡されるままコアラをしっかりと抱っこしました。
見た目からして大きなそのおっさんコアラはなかなかの重さで「いやぁー、酔っぱらっちゃったよ、まいったねコリャ。」という感じでのっさりと寄りかかってきました。
木に掴まる為の立派なツメが私の肩に若干食い込み気味で、正に力強い『おっさんの貫録』を感じさせました。
そのとき撮った記念写真には、酔っぱらいのおっさんコアラを抱っこする私の哀しげに引きつった笑顔がバッチリと写っています。
ポッサムの魅力
ブリスベンではホームステイをしていて、ホストファミリーのお宅には緑がいっぱいの広く素敵な庭とテラスがあり、私の部屋のすぐ外には丸い実のなる大きな木がありました。
ホストファザーが動物好きの私に「夜になるとこの庭にはポッサムがよく遊びに来て、木に登って果実を食べるんだよ」と教えてくれました。
ポッサムとはオーストラリアにいる有袋類の動物で、私のイメージではアナグマとリスを混ぜたような感じですが、とにかく物凄く可愛いです。
オーストラリアの動物の中で私の一番のお気に入りはポッサムです。
袋モモンガも可愛らしくて順位をつけるのが難しいところなのですが、やっぱりポッサムのふこっとした丸い背中のボリューム感は最高です。
ポッサムが来る庭
私は夜になると、自分の部屋の窓のすぐ外にある大きな木を見てポッサムが遊びに来ないかと心待ちにしていました。
するとある夜、木の枝がガサガサと揺れ、見るとそこにポッサムらしき動物がいました。
「うわぁー、可愛い!遊びに来てくれたのね!!」と小さな声で話しかけると、驚いたように高い枝へと逃げましたが、そこからしばらく私の方を見ていました。
それからというもの、晴れた夜はポッサムを木の枝に見つけることができ、私はよく星空の下でポッサムらしき影を眺めながら話しかけたりしました。
時々、何匹かで遊びに来てくれることもあり、私に近づいてくるわけではなくても、少しずつ私を認識してくれているのかなと嬉しい気持ちになりました。
素敵な事件
私のブリスベンでのホームステイが終わる数日前の夜、キッチンからホストマザーの悲鳴が聞こえたので、みんな慌てて駆けつけました。
するとホストマザーが「大変なのよ、みんな!今そこでポッサムが、私たちのキッチンでポッサムがバナナを食べていたのよー!」とパニック状態で言い念入りにキッチンの消毒をし始めました。
ホストマザーは特に動物好きではないので、彼女にとっては家に侵入する動物は迷惑で恐ろしい存在でしかなく、確かに野生動物はいろんな菌を持っているので、衛生面で考えると大事件ではありますが、私にとっては『ちょっぴり素敵なハプニング』に思え、どうして遭遇したのが私じゃなかったんだろうと、とても残念に思いました。
ポッサムへの想い
明るいキッチンに侵入してバナナを食べているところを見つかり、体格のいいホストマザーに大きな声を出されたポッサムの方も、驚いて心臓が止まりそうになりながら必死に逃げたんだろうなと思うと何だか可哀想だったり笑えたり、ホストマザーのことも気の毒に思えたりで、複雑な心境でした。
ホストファザーは「きっと君がポッサムに話しかけてたから、ポッサムも君に挨拶したくなって家の中に来たのかもね。」と私にウィンクして笑っていました。
その事件から数日後、私は次のホームステイ先のケアンズに移動したので、その後もポッサムが果実を食べにあの庭に来ていたのかはわかりませんが、ずっとそうあり続けて欲しいなと、今も願っています。
続きはまた『オーストラリアの動物たちと』Vol.2にて(^-^)