『福祉の実践』~レクリエーションゲーム~


お正月休み

皆様、明けましておめでとうございます。
『福祉の実践』として修行を始めてから初めて迎えるお正月、私が勤務するデイサービスセンターは大晦日から1月3日までお休みです。
昨年のお正月は、福祉系資格取得の為に学校に通っている最中で10日間の冬休みがありましたが、冬休み明けから連続で実施される試験に向けてクリスマスもお正月も返上して勉強に明け暮れていました。
今回はクリスマスも年末の大掃除もでき、お正月は日々の激務で疲れ切った身体を回復させるべく贅沢に時間を使って過ごそうと思っていたのですが、毎朝40分の徒歩通勤、サウナの中でトレーニングをしているのに等しい入浴介助と風呂掃除、分刻みで絶えず動き回る介護業務をこなす生活にすっかり慣れてしまい、何もしないでいると落ち着かなくて結局こまめに家事をしています。
冬になり、吹雪の中を歩かなくてはならない日もある朝の通勤は苦痛ですが、強制的に運動をする機会がなくなると体がなまり、かえって足腰が痛くなったりして「人間の慣れって凄いなぁ・・・」と感じます。


アイディア勝負

今回は私が勤務するデイサービスセンターで実施されるレクリエーションゲームについて書きたいと思います。
3時のおやつが終わると毎日レクリエーションゲームが行われます。
ゲームの種類は1週間ごとに変わり、介護職員が交代で1か月分のレクリエーションゲームを決めます。
安全性を考え座った状態で行うゲームが基本で、過去に行われてきた既存のゲームと介護職員が新たに考案したゲームを混ぜながら予定を立てるのですが『誰にでもできて楽しめるものでありながら簡単すぎないゲーム』であることが条件となるのでアイディア勝負の仕事です。
片麻痺があって片手や片足しか動かない方、握力が極度に弱い方、車椅子使用の方、全盲の方もいらっしゃるので無理なく参加できる内容にし、事前の説明や練習も別途実施します。
ゲーム内容によって準備にかかる手間と時間も様々なので、それも踏まえて1か月分の予定を立てなくてはなりません。
2月のレクリエーションゲーム担当となった私に、ある日突然『アイディアの神』が下りてきて幾つかのゲームが思い浮かびました。


満足感と達成感

1月31日(月)からの週は節分を含むので、1月のレクリエーションゲーム担当者が既存のお手玉鬼退治』という季節を感じるゲームを準備します。
ペットボトルで作った何体かの鬼にお手玉を投げ、当てて倒すゲームです。
次の週からが私の担当で、「鬼を倒した後は福の神を呼び込もう」という繋がりにし『福よ来い!』というゲームを考えました。
七福神が乗った宝船の絵を2リットルのペットボトルに貼り『宝船』とし、紐をつけた輪の中にセットして倒さないように紐を引っ張って引き寄せるゲームで、片手でも紐が引きやすいようにテーブルの上で行います。
時間と参加人数の関係で二人並んで同時にスタートしますが、あくまでも競争ではなく確実に自分の元まで『宝船』を引っ張ることで「福を引き寄せ縁起が良いぞ!」満足していただくゲームです。
基本的に私は、レクリエーションゲームでは全員に達成感を味わい嬉しい気分になって欲しいので、成功しやすい内容のゲーム選びを心掛けています。
次の週は、既存のゲームをより優しいルールにアレンジして作りました。


新ゲームが続々

既存の『輪投げ』は水を入れて重くした2リットルのペットボトルに直径15センチ程の輪を投げるもので、意外と難しくて全く成功できない方残念そうな顔をしていたので、私は『デカ輪投げ』を考案しました。
水を入れて重くした500ミリリットルの小さなペットボトルを20~30本散りばめて並べ、投げる輪は直径40センチ程の大きいものにします。
2回投げて合計何本のペットボトルが輪に入るかという、ハズレなしのゲームです。
その次の週は『ペットボトル玉乗せ』という新しいゲームで、500ミリリットルの空のペットボトルと外したを10本分と、ピンポン玉10個を使用して行います。
ペットボトルは横にして、蓋とピンポン玉はそれぞれ小箱に入れてテーブルの上に置いておきます。
まずペットボトルを立て、注ぎ口に蓋を逆さまにして重ね、蓋の上にピンポン玉を置くという組み立て作業片手だけで行い、30秒間で何本完成させられるかというゲームです。
完成しても手が触れて崩れたら得点にならないので、最後まで慎重に作業をする集中力を要し、良い脳トレにもなります。


安全確保と禁止行為

最後の週は既存の『紙コップカーリングというゲームです。
テーブルに何本か線を引いて区切り場所別に点数を決め、ゴルフボールにかぶせた紙コップを手で押し出してテーブル上で滑らせ前に進めるゲームです。
ゴルフボールにかぶせた紙コップは3つ準備し、先に滑らせた紙コップに次の紙コップをわざと当てて点数の高い場所へと押しやることもでき、3つの紙コップが最終的にある場所の点数の合計が得点となります。
テーブルから落ちた紙コップは無効となるので力の加減が必要なゲームです。
レクリエーションゲームを盛り上げるにはアイディア快活な司会進行が大事ですが、一番重要なのは安全確保の為の見守りです。
ゲーム席までの移動では転倒防止の為に手を引いたり、すぐに駆けつけて支えられる位置での見守りを行ったりします。
ゲーム中、椅子から転落しないように見守る際は「落ちないように腰を押さえてあげればいい」と安易に利用者の方の身体を押さえることはできません。
その行為は『身体拘束』という禁止行為に当てはまってしまうからです。


尊厳の尊重と責任

介護職員は利用者の方々に椅子に深く座っていただくようにお声掛けをして、転落しそうになっても素早く身体を支えられる位置に待機して注意深く見守るしかないのです。
なので、朗らかに司会進行をしている時でも常に利用者の方々の動きに対する目配り気配りが欠かせません。
利用者の方の中には、段々とできないことが増えていることに自分で気づいていない方、気づいてはいても認めたくない方もいて「このくらい自分でできるから手助けはいらない!」激しく介助を拒むことがあるので、介護職員には利用者の方々の自尊心を傷つけない心遣い適切な介助が求められます。
私は過去にサービス業に従事し何年も経験を積んできましたが、高齢者に対するこういった配慮に関しては、繊細な感覚奉仕の精神巧みな話術がなければ対応できない究極のサービスで、とても難易度の高い仕事だと感じています。
安全確保について「本人の希望と自尊心を尊重した結果、転倒事故が起きました。」と言ってはいられないので、『尊厳の尊重と介護職員の責任』はかなり難しい課題です。

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不相応な待遇

介護職員の仕事は人間的な適性が問われる部分が多いので、介護職員としての成長は単純に経験年数に比例するものではないと思いますし、国家資格の有無で介護職員としての優劣が決まるものでもないと思います。
複数名の利用者の方々の見守りや介助1人の介護職員が担当するということは、かなり高度な洞察力と俊敏さが求められているということになりますが、それに対する社会的地位や待遇の不相応さに考えさせられます。
たった3%の給料アップなどではなく根本的な改善の為にはどんな行動が必要で、自分には何が出来るのか思案するようになりました。
ちなみに「給料3%アップで9000円増しになる」ということは、基本給30万円が基準値になっていると考えられますが、地方にそんな雇用条件の介護施設は一体どれほど存在するのかと思ってしまいます。
多くは基本給がその半分以下のような気がしますし、このような政策側の甚だしい『机上の空論的思考』を打ち砕き現実を理解してもらう為には、どんな方法で訴えかけるのが効果的かを考えようと思います。


更なる学びと成長

そういったことを考える度に「私は今、福祉の実践を通して人間の核心について勉強する機会を与えられているんだなぁ。」と感じ、人生において非常に意味のある大切な時期を迎えているのだと思っています。
この仕事を始めて明確な成長も見られました。
人前で話すのが苦手だった私は、緊張でよく声が震えてしまっていたのですが、レクリエーションゲームの司会進行や多くの利用者の方々に向けてお話しする際は最初から全く緊張せずにでき、今は会議でも堂々と発表できるようになりました。
以前の私を知る人が見たらとても驚く成長ぶりだと思います。
この嬉しい変化は、温かく受け入れてくれる優しい利用者の方々のお陰だと思うので、私はこのデイサービスセンターの利用者の方々との御縁に感謝しています。
笑顔には達成感から浮かぶ喜びの笑顔、楽しさから浮かぶ陽気な笑顔、思わずつられて浮かぶ笑顔など様々ありますが、どの笑顔にも脳を活性化させ身体の免疫力を上げる力があります。
笑顔の印象というのはとても強く、認知症の方にも笑顔の人は認識されやすいそうです。


笑顔と笑顔で

日々顔を合わせる利用者の方々にはなるべく多く笑顔になって元気でいていただけるよう、私は自分のおもしろさ親しみやすさ褒める力惜しみなく発揮し、それらに対して返ってくる明るい言葉や笑顔にたくさんのパワーをいただいています。
レクリエーションゲームは皆で一緒に楽しめる恰好の時間なので、いろんなアイディアで力いっぱい盛り上げて大いに笑っていただけるよう、これからも張り切って頑張ろうと思います★

皆様、今年も幸多き一年になりますように (*^-^*)