『オーストラリアの動物たちと』Vol.3


様々なビザ

人生初の海外旅行オーストラリアを選び、2か月半程の滞在を終えて帰国した私は、オーストラリアの大自然と動物たちにすっかり魅せられ、再びオーストラリアに行く計画を練り始めました。
海外に滞在する為にはビザが必要となり、国によって規定が異なります。
オーストラリアの場合は3か月までの滞在であれば『ETAS』というビザが必要で、取得はそう難しくありません。
それ以上の滞在の場合は、就労ビザ学生ビザなど、目的に応じて様々な条件をクリアしている人にだけ与えられるビザが必要になります。
オーストラリアと日本の間で協定を結んでいる、1年間の滞在と働いて収入を得ることが可能な『ワーキングホリデイビザ』というものもあり、これは年齢制限があるのですが取得は比較的簡単です。

新たな思いつき

日本とのワーキングホリデイ協定国にはニュージーランド、カナダ、イギリス、ドイツなどもあり、全部で18~19か国程です。
(協定の打切りや新規の登録で変動があります)

当時、私は『ワーキングホリデイビザ』の取得制限にまだ間に合う年齢だったので、そのビザを取得して活用することにしました。
1年間の滞在が条件ではなく、3か月以下や6か月程の滞在に利用してもそれは個人の自由で、働かずに観光だけをして過ごしても問題ないという、使い勝手の良い便利なビザでした。
せっかく1年間の滞在ができるのだから、その期間を有効に使い意義のあるものにしたいと思い、やりたいことをあれこれと考えた末、動物好きな私は「そうだ!オーストラリアの動物園でボランティアとして飼育員のお手伝いをしてみよう!!」と思いつきました。


目標と実行

目標が決まれば、あとは実現に向かって実行あるのみで、私はオーストラリアの動物園で飼育員のお手伝いをするチャンスを掴むべく思考をフル回転させ行動を開始しました。
まずは英会話教室で、実際に生活の中で使う言葉や表現方法を更に身につけ、自分の言葉で自分の想いを正確に伝える為の取組みをしました。
世間には、料金を支払えば動物園で職業体験ができるという観光者向けプログラムもあり、それを利用すれば簡単に叶うことでしたが、そういったサービスでお客さんとして動物と関わるのではなく、自分の力でチャンスを掴みたかったので、私はオーストラリアの動物園などの施設をインターネットで調べ、30か所程の施設に「どうぞボランティアとして飼育員のお手伝いをさせて下さい!」というお手紙を書き国際郵便で送りました。

私の伝え方

Eメールを利用すれば費用も手間も掛かりませんでしたが、私は敢えて自分の動物に対する気持ちや、どうして飼育員のお手伝いをするチャンスが欲しいのか、自分はどんな考えを持った人間なのかなどを1枚1枚に手書きでしたため、自分の想いと情熱を相手に伝えました。
一般的には、動物に関わる職業を目指している学生などが、必須研修として、 動物園で飼育員のお手伝いをするようで、私は動物に関して学ぶ学生でもなく、動物に関する特別な知識がある訳でもなかったので、お断りのお返事が次々と返ってきました。
日本からの突然のお手紙に対し、ほとんどの動物園がきちんとお返事をくれ、幾つかの動物園はわざわざ国際郵便でお返事をくれたことに感動し、「やっぱり動物に対する思いやりがある人たちは優しいなぁ・・・」と思いました。


念願のチャンス

そんな中、一か所だけ私を受け入れてくれるお返事をくれた動物園がありました。
南オーストラリアにある動物保護施設で、担当者からのEメールには「あなたの動物に対する気持ちと、動物の為に働きたいという熱意が伝わりました。滞在場所や費用の援助はできませんが、それでも良ければボランティアとして受け入れます。」とあり、私はすぐに「受け入れのお返事に感謝します!ぜひよろしくお願いします!!」という内容の返信をしました。
受け入れて貰える日程が決まり、それをメインに考えてオーストラリア滞在の具体的な計画を立て始めました。
オーストラリアに渡ってすぐにその動物園に向かうのではなく、しばらく滞在して英語の環境に慣れてから飼育員のお手伝いを始めたいと思い、準備期間を設けました。

絶景の動物園

オーストラリアに渡り、初めにシドニーでホームステイをしました。
ホストファミリー宅にはスタンダードプードルトイプードルがいて、どちらもフワフワした白い毛が可愛らしく、私の良き遊び相手になってくれ、トイプードルは毎晩一緒に寝てくれました。
シドニーはオーストラリアで一番大きな都市で、ホストマザーによるとその都市の動物園は『世界一景色が綺麗な動物園』だそうで、私は早速フェリーに乗って行ってみました。
高台にある動物園にはビューポイントがあり、海の向こうにオペラハウスハーバーブリッジが見える絶景で、ホストマザーの言葉に納得しました。
動物越しに緑の木々青い海白い高層ビルが見え、自然と近代都市の不思議な融合が楽しめる、ダイナミックなパノラマが印象的でした。


イルカのご挨拶

オーストラリアで一番大きな都市の動物園だけあって、全てのエリアの造りがそれぞれ凝っていてとても豪華でした。
シドニーでは州の法律コアラを抱っこすることができないので、飼育員が抱っこしているコアラと並んで記念撮影をしました。
帰りにフェリーのデッキから深い青色の海を眺めていると、イルカがプカリと姿を現してフェリーを追いかけてきてくれました。
「さすがオーストラリア、湾にもイルカが普通にいるんだぁ!」と感激し、帰宅して夕食の際にホストマザーにその話をすると「それはとても珍しいことよ。あなたは運がいいわね。」と言われ、再び嬉しくなりました。
シドニー水族館は、ガラスのトンネルを通りながら魚たちを眺められる造りで、トンネルの上で寝ているサメたちのお腹を、下からガラス越しに見られるのが面白かったです。

異なるペット事情

一か月間のシドニー滞在を終え、次はメルボルンに滞在しました。
メルボルンはオーストラリアで二番目に大きい都市で、シドニーよりもコンパクトな中心街が行動するのにちょうど良い大きさで便利でした。
ホストファミリー宅は植物園に近い閑静な住宅街にあり、毛がフサフサした猫がいました。
州によって法律が違い、かれこれ15年前の話なので現在はどんなペット事情になっているのかわかりませんが、夜行性狩りをする習性があるは、国の大事な保護野生動物を殺してしまうので、ケアンズでもメルボルンでも夜になるとケージに入れられ、困った存在として扱われていたような気がします。
ちなみに、日本ではペットとして人気のウサギも、オーストラリアでは庭の草木や花、野菜など何でも食べてしまうので、害虫扱いされているようでした。


野外レッスン

私がボランティアとして飼育員のお手伝いをさせてもらえることになった動物園は、メルボルンから車で二時間ほどの地域にあり、メルボルンでの滞在を終えたらいよいよその動物園で私のスペシャルな体験が始まる予定でした。
それに備えて私は、私の英語のプライベートティーチャーでもあるホストマザーと一緒にメルボルンの動物園に何度か出掛け、動物についての表現や会話をメインに英会話の野外レッスンをしました。
タスマニアンデビルが人懐っこい様子で私の方へ寄ってきてくれるので、動物園に行く度にしばらく見ていました。
飼育員のことが大好きで集団でついて歩く小さなペンギンたちがいて、その内の2羽が飼育員の靴の上にちょこんと乗ったまま降りず、飼育員が動けずに困っている姿を、私は今でもはっきりと覚えています。

ラッキーな展開

メルボルンを後にし、電車とバスを乗り継いで、ついに飼育員のお手伝いをさせてもらえる動物園に到着しました。
受付で担当者を呼んでもらうと、飼育員の責任者がやってきました。
私の受け入れを許可してくれた担当者は、急な事情で少し前にその動物園を退職し、誰も私の受け入れの件を引き継いでいなかったのですが、私は念の為に担当者からのEメールをプリントアウトして持参していたので、それを見せ無事に予定通り受け入れて貰えることになりました。
私に素敵なチャンスをくれた担当者に会えないのは残念でしたが、新しい担当者がまだいない状態の為、それぞれのセクションの飼育員たちが順番に私の世話をしてくれることになり、通常ではどれか一つのセクションでしか飼育員のお手伝いができないところ、私はいろんなセクションでお手伝いができることになりました。
一歩間違えれば受け入れて貰えないということにもなりかねない状況だったのに、結果ラッキーな展開となりました。

本格的な飼育員のお手伝い体験のお話は、また『オーストラリアの動物たちと』 Vol.4にて★