インクルーシブな大会運営


障がい者のスポーツ大会

私は昨年の6月に転職をして福祉関係の事業所で働いています。
障がいのある方々社会との繋がりを持ちながら健康的な生活を送れるようにスポーツ活動を推進し、大小様々な大会を開催して発表の場を作るという公益性の高い事業を世界的に展開している組織で、4年に1度開催される大規模な夏季大会と冬季大会があり、それぞれ国内大会と世界大会があります。
私は今月開催される国内冬季大会の事務局で仕事をしています。
障がいのある方々のスポーツというと身体障がい者の総合的なスポーツの大会であるパラリンピックを思い浮かべる人がほとんどで、まだあまり広く知られてはいないのですが知的障がい者の為のスポーツ大会も展開されています。


大会の特徴

身体障がい者のスポーツ大会で有名なパラリンピックでは、オリンピックと同様に勝敗の結果や実力の優劣を競い合い、上位3位までのアスリートを表彰します。
知的障がい者のスポーツ大会では、個々のスキルのレベルによって分けられたグループごとに競技が行われるので、競技経験が浅い人でも自分と同レベルのグループに参加できます。
また、個人のスキルチェックを大会で公式にしてもらうこともできます。
大きな特徴としては一般的なスポーツ大会とは違い、優れた競技選手を決めることが目的ではなく、日頃の練習の成果発表を最後までやり遂げることが目的なので、上位3位までのアスリートにメダルが授与されるだけではなく、その他のアスリートにもリボンが贈呈され、競技に参加した全員が日々の努力と多くの人の前で練習成果を発表することができた勇気を讃えられ、温かい拍手の中で表彰されます。

インクルーシブな活動

冬季大会では7種目、夏季大会では21種目が公式競技とされており、その中には知的障がい者と障がいのない人がチームを組んで共に協力しながら競技をする『ユニファイドスポーツ』というものもあります。
知的障がい者の方々のスポーツ大会は、多様な環境で人々と関わりながらアスリートが練習の成果を発表する機会を持つことで活躍の場を広げ自信を身につけ社会との繋がりや自立心を持つことを意義とし、周りはその活動を支援し受け入れるというインクルーシブな(あらゆる人を包み込み支え合う)大会です。
大会運営組織はメインとなる大きな大会だけではなく日頃の練習の場や大小様々な発表の場、その全てに同じく意義があると考え、知的障がい者のスポーツ活動の推進をしています。


尊敬の念

私はこの仕事のオファーを受けるまで知的障がい者のスポーツ大会の存在を知りませんでしたが、大会の運営側に身を置いてからいろいろな事柄を学ばせてもらいました。
常に事務局の中で仕事をしているので、私は知的障がいを持つアスリートの方々と接する機会はほとんどないのですが、そのご家族やコーチなど関係者の方々にはたまにお会いすることがあります。
自分と同じ運営側の一員とはいっても、事務所の中で大会運営の仕事だけをしている私とは違い、知的障がいを持つアスリートと実際に深く関わり競技指導や事故がないように保護監督をするという大変な役割を果たしており、私は知的障がいを持つアスリートのご家族やコーチ、その他のサポートをしている現場の関係者の方々に心から尊敬の念を抱いています。

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気遣いの一手間

冬季大会開催日が近づくにつれ業務が大幅に増えて忙しくなり、先日は大会の開会式と閉会式のチケットを大会に参加する各都道府県の選手団に発送する作業に追われました。
発送準備は、各都道府県別に分けたチケットをバラバラとただ雑に封筒に入れて発送すれば面倒な手間も省け作業時間の短縮になりましたが、それは受け取った側が自分の選手団にチケットを振り分けて渡すのにとてもわかりづらくて手間取ってしまう不親切なやり方でしたし、遠方の各地から知的障がいを持つアスリートとその引率者の方々が大会に来るのだから、少しでもその方々の準備がスムーズに進むようお役に立ちたかったので、私は多少時間が掛かってもわかりやすく分類して発送する方法をとりました。
私は福祉の基本親切心だと考えているので、可能な範囲でそういった気遣いの一手間を大切にしたいと思っています。


参加者の為に

この仕事を始めた当初は「大会運営に関わるからには必ず大会を成功させよう!仕事の成果を収めよう!」という気持ちでしたが、この大会の素晴らしい意義を知ってからは自分の仕事への評価などよりも、知的障がいを持つアスリートの方々の大会出場に向けた頑張りや、コーチやご家族、その他の関係者の尽力と努力を一番に考えるようになり「大会出場の為にはるばる開催地に来てくれる方々の為に絶対に良い大会にしたい!どうぞ天候にも恵まれて無事に開催できますように!」と毎日願うようになりました。
組織の為よりも、責任者の為よりも、とにかく私は大会に参加するアスリートやコーチ、ご家族やその他の関係者の方々の笑顔の為福祉の心で最後まで頑張ります。


福祉の幅広さ

こうした福祉事業に携わりながら、私は『福祉』の幅広さを知りました。
今、私が大きく思いつくのは障がい者の為の福祉、子供の為の福祉、高齢者の為の福祉、社会的弱者の為の福祉です。
障がい者の為の福祉には視覚障がい者の為の福祉、聴覚障がい者の為の福祉、その他の身体障がい者の為の福祉、知的障がい者の為の福祉、発達障がい者の為の福祉などがあり、それらには更にスポーツ関係の福祉と生活関係の福祉があります。
子供の為の福祉にも経済格差に対する福祉、学力格差に対する福祉、虐待から守る為の福祉、いじめから守る為の福祉などがあり、きっと他にももっとあるのだと思います。
現時点で私は自分が進みたい分野はどれで、自分にできることは何なのかがわからずにいるのですが、決断を急ぐ必要もないですし、人生は御縁とタイミングが肝心なので、焦って先のことを考えるよりまずは目の前の冬季大会に向け準備作業に励みたいと思っています。
これからが正念場なので、全力で頑張ります!