運命の誕生日
2020年3月3日で、我が家の愛しき老猫ちゃんが23歳になりました!
23年前の雛祭りの日、私と一緒にいた知り合いに高校生の息子さんから「子猫が無事に6匹も生まれたよー!」という喜びの電話があり、私は自分と運命で結ばれている猫ちゃんたちの誕生を知りました。
知り合いの息子さんの猫たちはどちらも避妊手術をしていた為、今回の出産は予想外の展開で「子猫の貰い手をちゃんと探してあげなくちゃ!」と親子で慌てていました。
子猫たちのお父さんとお母さんは血統書付きの猫で、コンテストでも数回優勝している自慢の美猫なのですが、チンチラゴールデンのお父さん猫とロシアンブルーのお母さん猫の間に生まれたので子猫たちは雑種になるとのことでした。
子猫たちとの生活
美猫の子供たちだけあり、お父さん似とお母さん似に分かれつつもみんな綺麗な容姿のようでした。
当時まだ高校生だった知り合いの息子さんは、自分の大事な猫の出産に一人で立ち会い、生まれた子猫たちのお世話をしており、私は彼の猫たちへの愛情の深さと強い責任感に感動しました。
私は動物が好きで特に猫好きだったのですが、一人暮らしで仕事でもプライベートでも家を空けることが多い生活スタイルだったので、自分が子猫の貰い手になろうとは考えていませんでした。
子猫の貰い手として決まった2人がゴールデンウィーク期間は不在な為、その間だけ子猫を預かって欲しいと知り合いに頼まれ、私は少しの間だけ2匹の子猫と一緒に暮らすことになりました。
一時的なお世話
一時的な預かり生活とはいっても10日間ぐらいのことだったので、私は子猫との生活の為にトイレセット、ご飯とお水用の器、キャリーケース、猫の飼い方のマニュアル本を購入し、子猫用ミルクとそれを飲ませる為のスポイトも準備して子猫たちを迎え入れました。
私の所に来た子猫たちは、親猫から引き離され知らない場所へ連れてこられたので2匹でひっついたまま震えていました。
1匹ずつ抱きかかえてスポイトで子猫用ミルクを飲ませ一緒に過ごしている内に、不安そうだった様子が少しずつ消え、私に心を開いてなついてくれているように思えました。
おトイレの仕方は親猫がすでに教えていたようで、子猫たちは上手にできていました。
私の決断
何をするにも常に一緒で離れない2匹の姿を見ていると、私はゴールデンウィークが終わったらこの子猫たちが1匹ずつ別々の所へ連れて行かれることが無性に不憫に思え、知り合いに「子猫たちを引き離さずに、2匹一緒に受け入れてもらう訳にはいかないだろうか。」と相談しました。
ですが、どちらの貰い手も「子猫1匹なら何とか引き受けてもいいよ」という条件で、2匹一緒に引き取るのは難しいとのことだったので、私は考えた末ついに心を決め「せっかく引き受けてくれた2人の貰い手には申し訳ないけれど、子猫たちは2匹一緒に私に育てさせて下さい!」と知り合いにお願いをして、そのまま2匹の子猫たちと生活を続けることになりました。
自分の分身
私の家族となった子猫たちに私は自分の名前の漢字を1字ずつあげて名付け、自分の分身のように大事に育てました。
自分に似た性格の子猫たちを見て、度々ハッと思わされることもありました。
子猫たちの兄弟姉妹4匹がそれぞれの貰い手の所で、耳ダニなどの病気、交通事故、動物同士のトラブルで、わずか数カ月で旅立ってしまったという悲しい知らせを聞き不安になった私は、子猫たちを慎重に育てる為に猫に関する参考書を何冊も熟読しました。
自分を頼りにして家で待っている大事な存在ができたことで、私は命への責任を持ち「必ず守っていくんだ!」という強い意志で、嫌なことから逃げずに乗り越えられるようになり、そんな成長を与えてくれた猫ちゃんたちとの御縁に感謝しました。
若かりしワイルドな時代
そんな私の気持ちを汲んでくれたのか子猫たちはスクスクと元気に育ち、1匹は19歳で旅立ってしまうまで私を癒し続けてくれ、もう1匹は23歳になった今も健在で私に幸せを与え続けてくれています。
外国種の猫は日本猫よりも体が大きいので、ウチの猫ちゃんたちはいつも「大きいねー!」とか「えぇっ、オスじゃないの?!」と驚かれていました。
パワーが溢れていた若き日々は、ワイルドに網戸やカーテンにのぼり、食卓から食べもしない餃子を奪いベッドの下に隠し、2匹で追いかけっこをしては私にぶつかり私の顔に引っかき傷をつけ、背中に飛びついては爪を立ててぶら下がるなど、とにかくやんちゃで大変でした。
クローゼットの扉を力づくで開けて洋服を引っ掻くので、高価なスーツが台無しになって途方に暮れたこともあります。
赤ちゃん返り
年齢と共に落ち着いてきた猫ちゃんたちですが、猫ちゃんたちが10歳のときに私の娘が生まれ赤ちゃん中心の生活スタイルになり、以前の様に猫ちゃんたちにかまってあげられなくなると、猫ちゃんたちは揃って赤ちゃん返りをし、今までにないぐらい甘えん坊になりました。
それまでは尖った態度で抱っこされるのを断固として拒んでいた猫ちゃんたちですが、いつも娘が私に抱っこされているのを見ている内に羨ましがるようになり、私が娘をベビーベッドに寝せてソファーで一息つくと、すぐにどちらかの猫がヒザの上に座って『抱っこしてアピール』をし、足元ではもう1匹の猫が順番待ちをしているので、私は常に娘か猫ちゃんを抱っこしている生活でした。
困難と成長
エンドレスの抱っこに追われてまともに眠れず、腱鞘炎にもなり身体がしんどい状態でしたが、猫ちゃんたちに「ほほう、抱っことはなかなか良いものですなぁ♥」という満足そうな顔でゴロゴロと喉を鳴らされると、私には抱っこを拒否することなど到底できませんでした。
赤ちゃんの泣き声や予測不能な行動が大きなストレスとなって猫ちゃんたちは体調を崩し、1匹はハゲができ、1匹は腎機能低下で2週間の入院を強いられ小さな手に点滴針を刺されっぱなしの生活を送るなど、2匹とも多大な迷惑を被りましたが、娘が成長し動物好きな面倒見の良い子に育ってくれたので、猫ちゃんたちは娘に抱っこされたり撫でられたりするのが気に入り、家族みんなが仲良く暮らせるようになりました。
強いハート
2011年の東日本大震災で被災し、実家に一時避難したときも、この地域に移住してきたときも私たちはずっと一緒でした。
飛行機を利用する際、猫ちゃんたちはジェットエンジンの爆音が響く貨物室に荷物と一緒に積まれるので、当時すでに14歳だった老猫ちゃんたちは大丈夫かと心配でしたが、2匹ともどうにか我慢して頑張ってくれたので、猫2匹と幼児を連れたハードな移動を無事にこなすことができました。
『猫は人ではなく家につく』といいますが、ウチの猫ちゃんたちは5回の引っ越しでも各住居で家族と一緒にリラックスしており、この地域への移住の際もすぐに新居に馴染めていたので「ウチの猫ちゃんたちは神経質な性格じゃなくて良かったなぁ・・・」と思いました。
心の繋がり
様々な逆境がありつつも、私たち家族は常に寄り添い共にいられることに感謝して暮らしました。
そんな中、2016年5月5日にチンチラゴールデンのお父さん猫によく似たウチの老猫ちゃんが19歳で旅立ち、私たちはいつも側にいた存在が消えてしまったことが悲しくて泣き暮らしていました。
ですが『四十九日』が過ぎる頃には『存在が消えた』のではなく『居場所が心の中に変わっただけ』と思えるようになり、私は旅立ってしまった老猫ちゃんとの心の繋がりを感じながら「いつも見守ってくれてありがとう」と心の中で想うようになりました。
『四十九日』というのは霊が成仏する為の期間といいますが、残された者が気持ちの整理をつける為の期間でもあるんじゃないかと私は思いました。
多様な幸せ
「今まで仲間がいたのに独りぼっちになったら猫が淋しくて可哀そうだから、猫をもう1匹迎えた方がいい。」と人に言われることもありましたが、私は人間も動物も性格や感じ方は多様だと思っており、ウチの老猫ちゃんは1匹になってから更に甘えん坊になって、私と娘を独り占めして甘え放題な生活を満喫している様子なので、新しい仲間を迎えて賑やかにするよりも、のんびりと過ごせる静かな環境で余生を送らせてあげたいと思っています。
「みんな一緒の方が楽しい」という人もいれば「他人といて気疲れするよりも一人でいる方が気楽でいい」という人もいるのと同じで、猫ちゃんの好みだってきっといろいろです。
『長生き』と『食欲』
ウチの猫ちゃんたちは雑種ということで免疫力が純血種よりも強いと思われ、ありがたいことに食欲旺盛によく食べてくれたので、どちらも長生きなのかもしれません。
お気に召さない缶詰をあげると意地でも食べずに残すので、嫌いな缶詰を把握して買わず、飽きないように毎回違う種類の缶詰とドライフードをあげるとモリモリ食べてしっかり排泄をする健康的な生活でした。
23歳になった猫ちゃんはロシアンブルーのお母さん似ではなくキジトラ柄の短い毛並みだったはずなのですが、もう1匹の猫ちゃんが旅立ってから前よりもフサフサしてきて、あちこちにできる毛玉を「急にどうしちゃったの?!」と不思議に思いながらせっせとカットしています。
小悪魔的な賢さ
19歳で旅立った猫ちゃんもとても賢かったですが、23歳にもなると賢さに磨きがかかり、ご飯のおねだりは声ではなく熱い視線で心に訴えかけ、抱っこのおねだりは思わせぶりな態度でワザと行く手を塞ぎ、抱っこしやすい位置で立ち止まって背中でアピールします。
ベッドで一緒に寝たいときは「さあ、私について来て!」と少し歩いては立ち止まって振り返り、何度も小悪魔的にいざないます。
夜中に淋しくなると私の枕元に来て、目玉をえぐり出すかのように肉球で圧をかけ確実に一撃で起こし「ウニャーン♥」と甘えた声でその場を取り繕います。
そんな鬼の所業をする老猫ちゃんですが、毛玉を吐くときは必ずベッドから降りて床で吐くという健気な気遣いもあり、私は何度も容赦なく睡眠を妨害されてもやはり愛さずにはいられないのです。
長い付き合い
近年の猫ちゃんのお誕生日のお祝いは、娘と2人で可能な限りのテンションと手間暇で猫ちゃんをお姫様のように特別扱いしてサービスすることで、チヤホヤされてご満悦の猫ちゃんに私と娘は心が和みこの上ない笑顔になります。
現在、老猫ちゃんは私の年齢のちょうど半分の年月を一緒に生きており、そんなに長く私と暮らし私の生活を詳しく知る家族は他にいません。
私の人生の半分を近くで見ながら共に生き、私のことを一番よく知る愛しき老猫ちゃんは、私の可愛い子供であり、心強い相棒であり、とても大切な宝物です。
これからも平和な環境の中で、どこも痛くならず不自由を感じることなくゆったりとした日々を過ごして欲しいと心から願うばかりです。
「今日も生きててくれてありがとう、大好きだよ♥」