『オーストラリアの動物たちと』Vol.5


夢のような体験

20代の頃、初の海外滞在にオーストラリアを選んでたくさんの素敵な経験をした私はすっかりオーストラリアに魅了され、今度はワーキングホリデービザを取得して再びオーストラリアに滞在することにしました。
私はオーストラリアの動物園でボランティアとして飼育員のお手伝いをさせてもらいたいと考え、オーストラリアの動物園など30か所程の施設に「どうぞボランティアとして飼育員のお手伝いをさせて下さい!」と、動物に対する自分の気持ちや考え、なぜ飼育員のお手伝いをするチャンスが欲しいのかなどを手紙にしたため郵送しました。
私には動物に関する特別な知識がある訳でもなかったのでお断りのお返事が次々と返ってきましたが、南オーストラリアにある動物保護施設から「あなたの動物に対する気持ちと、動物の為に働きたいという熱意が伝わりました。ボランティアとして受け入れます。」というお返事をもらうことができ、私の夢のようなオーストラリア滞在が実現しました。

動物たちとのお仕事

私はまず、シドニーメルボルンホームステイをし、英語での生活環境に少し慣れてからボランティアとして受け入れてくれた動物保護施設を訪れました。
いざ到着してみると、ボランティアとして私の受け入れを許可してくれた担当者が急な事情で退職し、誰も私の受け入れの件を引き継いでいない状態なことが判明しました。
「まさか、このまま帰されたりしないよね・・・」と私は焦りましたが、はるばる日本から来たということもあり、とりあえず予定通りに受け入れてもらえることになりました。
通常は一つのセクションだけでお手伝いをするところ、複数のセクションの飼育員たちが順番に私を受け入れてくれることになり、その動物保護施設のトレードマークになっているオーストラリアの動物の中でも希少なカモノハシの水槽掃除からスタートし、私のお気に入りの動物でもあるポッサムやフクロモモンガなど夜行性の小さな動物たち、カンガルーやコアラたちのお世話をさせてもらいました。


飼育員さんの情熱

動物たちの食事の準備にフルーツ、野菜を切る作業や掃除では日本人らしい細やかで丁寧な作業が評価され、飼育員さんたちが私を仲間として認めてくれるようになりました。
ポッサムやフクロモモンガなどのセクションにいる、普段は朗らかで優しい飼育員の若い女の子が「このセクションの動物たちはみんな小さくて怖がりだから、静かに観覧するようお知らせをしているの。なのにこの前、ある小学校の子供たちが見学に来て行儀悪く大騒ぎしたから動物たちがストレスを受けたのよ。だから私、これからこの地域にある全ての学校宛てに“動物の為にマナーを守れないなら見学には来ないで下さい”って手紙を書くの!」と怒り心頭な様子で言っているのを聞いて「飼育員をしている人は動物を本当に大事にしていて、きっと親のような気持ちで守りながらお世話をしているんだなぁ・・・」と感じ、私はそんな情熱を持つその若い女の子をはじめ、そこの飼育員さんたちのことがますます好きになりました。

ディンゴのお世話

コアラとカンガルーのセクションの二人組の若い男性飼育員さんはとにかく明るい人たちで、いつも歌いながら仕事をしていました。
その二人が、飼育員のお手伝いに段々慣れてきた私に「実はこのセクションではディンゴの世話もしてるんだよ。そろそろディンゴの世話もしてみるかい?」ノリノリな様子で言うので、新しいことに挑戦するのが大好きな私は「イイねぇ!もちろん喜んで!!」ノリノリで答え、弾む足取りでディンゴのエリアに向かいました。
ディンゴは、柴犬の雑種犬ハスキー犬ぐらいの大きさにしたような感じで、見た目はなんとなく馴染みがありました。
私は当時、オーストラリアの人たちからディンゴは中国の赤犬(柴犬を大きくしたような犬)と狼の混血の狼犬だ」と聞いていました。
そこの動物保護施設には大人のディンゴと子供のディンゴがいて、大人のディンゴは体が大きくて野性味が強くよそ者を受け入れないとのことで、私は子供のディンゴのお世話することになりました。

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甘えん坊のパピィ

大自然の中にある動物保護施設なので敷地が広大で、各エリア間の移動もなかなかの距離で、道に迷ってしまうこともありました。
陽気な二人組の飼育員さんが「この施設で生まれたディンゴのパピィ(子犬)でオスとメスの兄妹なんだけど、甘えん坊でとても可愛いよ!」と言うので、まだその施設のディンゴたちに会っていなかった私は「甘えん坊のパピィかぁ・・・可愛いだろうなぁ♥」と、抱っこできるのを期待しながらディンゴのエリアに向かいました。
子供のディンゴのエリア入り口で二人組の飼育員さんは立ち止まり、急に今まで見たこともない真剣な顔で振り向くとディンゴの前では絶対に倒れちゃダメだよ。何があっても立っているんだ!」と私に念を押しました。
「えっ?は・・・はい。」と私は答え、三人で一緒に子供のディンゴのエリアに入り飼育員さんたちが二匹の名前を呼ぶと、だいぶ離れた所にある岩の陰から中型犬くらいの大きさのディンゴたちが飛び出して、私を目掛けて突進してきました。

激しい歓迎

「ヤバい!このまま体当たりされたら倒れてしまう!」と、私はとっさに中腰で前傾姿勢をとり前後に足を開いて『カメハメ波』を出す直前の孫悟空ぐらい踏ん張りました。
「あっそぼー♪」と嬉しそうな表情で一匹目のディンゴ私の肩に両前足をドーン!
その衝撃に「ウォッ・・・」とうめき声を漏らす私。
そして、そのディンゴと私の間に下から潜り込んだもう一匹のディンゴ「イェーイ、私もー♪」と勢いよくジャンプしながら私の顎に頭をゴーン!
更なる衝撃に「ンゴォッ・・・」と死にそうな声を出す私。
痛みに耐えて立ち続ける私に飼育員さんたちは「歓迎されてるね。どうやら気に入られたみたいだよ!」と微笑み、「すごくいい写真が撮れたよ!」とデジカメを見せてくれました。
顎を下から頭突かれた苦痛の表情の私と、無邪気にはしゃぐ子供のディンゴたちの画像はどうみても傷害事件の瞬間の記録にしか見えず「どこがいい写真なんじゃぁー!」と私は心の中で激しくツッコみました。

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仲良しな私たち

ディンゴたちの月齢を訊ねると「まだ7か月の赤ちゃんだよ。可愛いだろ★」と答える飼育員さんに「子供だからパピィには違いないけど、狼犬や大型犬の月齢7か月の体格ってかなりイカツいよね・・・お願いだから先に教えといて( ;∀;)」と私は思いました。
体は大きくてもやはり中身は子供なので、ディンゴたちは人懐っこくて確かに甘えん坊でした。
若さとパワーが溢れているのでじゃれつかれる度にこちらは真剣な体力勝負でしたが、ディンゴたちに背中をとられないようにし、飛びつかれそうになったら前腕で受けてから払ったりと対応の仕方のコツを掴んで渡り合うことで、私と子供のディンゴたちは仲良しになりました。
私は他のセクションのお手伝いに入りディンゴのお世話から離れてからも、1日1度は必ず子供のディンゴたちに会いに行き、柵越しに話しかけていました。
お昼寝中でも私が名前を呼ぶと二匹とも走って近くに来て、立ち去るときは遠吠えでお見送りをしてくれました。

パイソンのお世話

ディンゴのセクションで私がパピィたちのお世話をしたと聞いて、爬虫類のセクション担当者が「ここでもボランティアとして手伝ってみるかい?」と言ってくれ、私は爬虫類のセクションでもお手伝いできることになりました。
せっかくの機会と思いパイソンを首にかけて記念写真を撮ると、パイソンは担当の飼育員さんが目を離した隙に徐々に私に巻きついて締め付けようとしてきました。
飼育員さんが気付き、パイソンは私から引き離されながら飼育員さんに叱られていました。
そのパイソンはそこの動物保護施設で生まれ、飼育員さんに育てられたので人に懐いてはいましたが、私はそのパイソンに野生本能の奥深さを感じました。
蛇はエサを丸呑みして食べる為、消化するのに数日かかるので、食事は数日に一度のペースで、長いトングで挟んだ鶏肉などを蛇の鼻先で揺らしながら「生きている獲物感」を出してあげると、しばらく知らんぷりをしてから急にパクッと丸呑みするのがおもしろかったです。

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おちゃめな飼育員さん

「ちょっと持っていて」と、ボール状に丸めたパイソンを飼育員さんから手渡され、私は両手でしっかりと受取りました。
体長1.5m、体重2.5~3kgぐらいのまだ若いパイソンしっとりとなめらかな表面をしていて肌触りが良く、私はドキドキしながらパイソンを両手でキープしていたのですが、飼育員さんたちはおしゃべりに夢中になり私とパイソンの存在を忘れてしまったようで、私は飼育室の片隅で15分以上パイソンを持ち続ける羽目になりました。
重くて腕が震え、次の日は筋肉痛になりました。
爬虫類セクションの飼育員さんたちは「一緒に働いた記念に俺たちの宝物をプレゼントするよ」パイソンの大きな抜け殻を私に差し出し「ここで働いた証拠として日本の家族や友達に見せるといいよ」と言ってくれました。
パイソンの完璧な形状の抜け殻はとても貴重らしく、アートのような美しさに私は魅かれましたが、ワシントン条約に引っかかっても困るので温かい気持ちだけをいただき感謝の握手をしました。


続きはまた『オーストラリアの動物たちと』Vol.6にて

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