3月の想い

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ピアノコンサート

2017年3月11日(土)、とあるホールで開催されたピアノコンサートに行きました。
2011年東日本大震災の復興支援のチャリティーイベントとして開催されているこのコンサートに私が伺うのは、今年で2度目でした。
震災が発生した時刻に黙祷をささげた後に始まったそのコンサートでは、素敵なシルバーヘアー女性ピアニストの先生が、全身を大きく使い情熱的で力強くも、優しさに満ちた美しい音色を聞かせてくれました。

いろんな想い

ガラス張りで外の景色が見えるそのホールは天井が高く開放感があり、普通の音楽ホールのような堅苦しさがない分、ゆったりとした気持ちで音楽を鑑賞できるので、私は気に入っています。
私の席の近くに、演奏を聴きながら泣いている女性がいました。
「きっとこの女性は実際に被災して、とても辛い思いをしたんだろうな・・・」と思い、あまりに悲しそうだったので何か気の利いたことがしたかったのですが、声を掛けるべきなのかどんな言葉を掛ければいいのかわからないまま、コンサートは終了し、気が付くとその女性は既に会場を後にしたようでした。

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祈り

説明によると、そのピアニストの先生は20歳ぐらいの頃から音楽留学の為に単身でヨーロッパへ渡り、長く実績を積まれていたのですが、ずっとピアニストとしての活動を続けていたのではなく、人生の半分近い数十年間は、お母様とご主人の看病に献身していたとのことでした。
ひたすら続く看病の日々は、体力的にも精神的にもとても辛かったに違いありませんが、祈りの気持ちを胸に、くじけずに過ごしてきたとのことで、先生の精神力の強さが伺えました。

真摯な姿勢

また、東京の地下鉄で起きたサリン事件でたくさんの命が奪われて以来、先生は人々の為に『祈り』というものを考えるようになり、祈りの気持ちが届くように音色に想いを込めながらピアノの演奏をするようになったと聞き、先生の『人を思いやる心の大きさ』を感じました。
今はお母様もご主人も他界され、音楽活動に専念しているとのことでしたが、かなりの気力と体力を消耗するはずのピアノ演奏を、身体の調子が良くないときでも弱音を吐かず、リハーサルの段階から常に全力投球で弾いているとのことで、なんて芯の強い方なんだろうと、真摯な姿勢に心を打たれ、その人間性に魅かれました。

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懇親会

今年は同じ会場でコンサートの後に『懇親会』として、ピアニストの先生と直接お話をする時間が設けられていました。
震災のチャリティーイベントということなので、震災のときの悲しい話題になるのではと思い、気持ちが沈む恐れを考え、そのまま参加せずに帰ろうかとも思ったのですが、そのピアニストの先生にどうしても直接お礼が言いたかったので、思い切って参加することにしました。
懇親会に参加したのはその先生の根強いファンの方々で、被災者は私以外にいないようで、話の内容は主にその先生の今後の音楽活動についてなどだったので、和気あいあいの雰囲気にホッとしました。

不意の涙

帰る前にそのピアニストの先生に「被災してこちらに避難してきている者で、このコンサートには前回から伺わせて頂いております。いつも素敵な音楽を有難うございます。」とご挨拶をしました。
すると、その先生は何も言わず深い慈しみの表情で私に向かい、ただ何度も頷きました。
言葉が無くても伝わってくるその心の温もり心に染み、私は不意に涙が込み上げてきて、それ以上何も言えなくなりました。
するとその先生は、私にハグをして「大変でしょうね。わかりますよ。大丈夫、一緒に頑張っていきましょう。私も、来年もまた会えるように頑張るから。」
といって、頬にキスをして優しく激励してくれました。

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悲しい気持ち

東日本大震災からしばらく経ち、私は被災したけれども近しい人の命が奪われた訳ではなかったので、「そういうつらい被害にあった他の被災者に比べたら、それほど大きな心の傷は受けていないないんだ。」とずっと思っていたのですが、その先生に静かに見つめられると、今まで知らず知らずのうちに心の奥に閉じ込めていた悲しい気持ちが溢れ出し、自分の感情を抑えることができなくなってしまいました。

強がる心の殻

きっと私は、悲しい気持ちに押し潰されると動けなくなるので、いつもわざと自分に「もっと辛い思いをしている人たちに比べたら自分なんてたいしたことないんだから」と言い聞かせることで本当の気持ちに蓋をして「私だって私なりに辛くて悲しい」という事実を、なるべく認めないようにしていたこと気付きました。
頑なに強がる心眼差しだけでフワッとほどいて、一瞬で心の殻を取り払ってしまうほどのその思いやりと優しさに満ちた空気「こんなに凄い人って本当に存在するんだ・・・」と驚きました。

慈愛の深さと温もり

本当に慈愛に満ち溢れている人というのは、自然とその温もりが相手に伝わるので、言葉なんてなくても相手を癒せるものなんだと思いました。
あの日以来、私は気持ちが前よりも少し楽になった気がしています。
『辛くて泣きたかったら素直に泣けばいいんだ』と思えるようになりました。
また来年の同じ日に、あの素敵な先生にお会いして、凛とした姿で奏でる美しいピアノの音色を聴くことができたらいいなと思います。


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